Web2.0的なサービス展開

最初は営業トーク用の一時的な流行語で終わるかな、なんて思っていた「Web2.0」ですが、よっぽど据わりがよかったのか段々と世間に定着しつつあるようです。根本的にWeb2.0という言葉が確たる規格などではなく、Webの世界で起こっている新しい流れに名前を与えたものなので正解はないし、一つのものに限定されるものでもありません。Web2.0が語る人によって切り口だけではなく内容まで違ってしまうのはそのためで、そこを指摘して「Web2.0は実体がない」というのはあまり意味がないように思います。

自分の頭の中を整理する意味でも、よくある「Web2.0的なサービス」の概念をまとめてみたいと思います。

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まず、ユーザーが何らかの形でサービスにアクセスします。アクセス経路としては

  • サービスを運営する母体となるサイトを知っている
  • Googleなどの検索エンジンから
  • 誰かのブログで紹介されているのを見て
  • 各種広告から
  • APIを利用した外部のサイトやブログから

などが代表的なところでしょうか。API利用の場合は、そこからサービスの本サイトに移動することもあるだろうし、APIだけでサービスが完結する場合もあるでしょう。

そうしてサービスにアクセスしたユーザーが何らかの形でサービスを利用します。ここまでは、従来のWeb上で展開されてきたサービスと基本的に同じです(APIは2.0的な要素ですが)。「Web2.0」と呼ばれるサービスは、それを利用したユーザーが自らサービスのコンテンツを拡充できるところがポイントです。何らかのベネフィットを求めてサービスを利用したユーザーが、そのサービスに満足・共感し、サービスをより充実した物にするため自ら積極的に関与する。そうすることでサービスは更に魅力的なものとなり、より多くのユーザーがサービスを利用するようになる。この好循環が続くことであたかもサービスが自ら育っていくように見える。これがWeb2.0サービスの成長モデルではないでしょうか。

旧来のWebコンテンツというのは「提供者」と「閲覧者」が明確に分かれていました。掲示板などでフィードバックを返すことはできても、それが直接コンテンツと結びついてはおらず、あくまでコンテンツを提供するのは、特権を持った管理者でした。その構造から脱却し、不特定多数によるサービスの構築を可能にしたモデルがWeb2.0的であると言われている。個人的にはそのように考えています。

サービスの内容は自由ですが、今のところ「情報」を取り扱うものが多いようです。それは、サービスを利用したユーザーがコンテンツの拡充に参加する際、何かを書くことで情報を提供するという行為がハードルが低く、「何かを書きたい、伝えたい」という多くの人がもっていた潜在的なニーズに合致したためでしょう。梅田望夫さんが「ウェブ進化論」で述べていた「総表現社会」というのは、皆が自身のブログや縦横無尽に展開したサービスの中で様々なものを書いていくイメージなのでしょうか。

Web2.0的なサービスは、うまく回ればユーザーにとって非常に魅力的なものです。しかしながら、「どこの誰が書いたかも分からないサービスは信用に値しない」「性善説に基づいた運用でリスク管理はどうするのか」「運営者の意図にそぐわない情報や、都合の悪い情報をどうするのか」といった問題も存在しています。そこをどう乗り越えるかは、Web2.0のこれからの課題といったところでしょう。

ビジネス的な観点で見た場合、上記のような問題は無視できないので、一般企業(特に大手)は当面参入は難しいでしょう。また、サービスそのものがお金を生み出すことも難しいのが現状です。何故なら、無料であるからこそ多数のユーザーがサービスを利用し、「自分が参加している」という意識を持ってコンテンツを拡充してくれるからです。お金を払って利用する「お客様」になってしまうと、なかなかそういう気運は高まらないのではないかと思います。また、根本的にユーザーが「このサービスを育てよう」という意識を持ってくれない限りは、そもそもサービスが育つことはありません。サービスの利用者が少ない(あるいは存在しない)初期段階において、いかに魅力的なコンテンツを携え、ユーザーを牽引してくるかも重要な課題となります。

今のところWeb2.0のビジネス的な活用としては、直接そこから収益を上げることよりも、人が集まることの副次的作用としての広告収入や会社のブランディングリクルートへの活用というところが妥当な線ではないかと思っています。