別にGoogleは「静的URLに変換することはかえってマイナスになると、指針を180度転換」したわけじゃない

SEOとか普段はスルーするネタなんだけど、内容がわりと刺激的だったのでひっかかった。このエントリでは、

これまでのGoogle SEOを大きく覆すようなアナウンスが、Google Webmster Centralブログで発表されました。
動的URLを静的URLに書き換えるべきではなく、動的URLは動的URLそのままにしておく方が好ましい、
というのです。

という導入から、

今回Googleは、動的URLはそのままにしておくべきで、静的URLに変換することはかえってマイナスになると、指針を180度転換しました。

と書いています。

本当ならえらいことです。Amazonを始めとする超大手サイトにも影響するし、フロントコントローラ系のフレームワークはすべからく涙目。さすがにそれはねーだろ、と思って原文を読んでみたら案の定それほど騒ぐようなことではないようです。そんなに難しい文章じゃないし、量も少ないのでちゃんと原文読みましょう。

Googleのクローラは動的URLを読めないから、静的URLっぽく見せるのがプロのSEOテクニック!」とか言われてるのは日本だけじゃないらしく、それに対して「そんなことしなくても、ちゃんとURLのパラメータ見るから変なrewrite設定してクローラを混乱させないでくれ」と言いたいだけのようです。

ちゃんとURLと内容が1対1の関係になるようなURLならrewriteしても問題ないとも書いてます。セッションIDのような、ページの内容に無関係なパラメータをURLに含めると、URLからはディレクトリやファイルと区別できないのが問題なわけです。

「動的URLのままにしておけばそのへん考えなくていいからお勧め」と言われてるだけで、「動的なURLがSEO的に有効」とかでは決してないです。そういう情報が出回ったら、まず間違いなくデタラメなので惑わされないようにしましょう。

日本語エントリを起こした人は、誤訳したというよりは恣意的に煽ってるように見える。自身のブログの読者層を考慮して「書き換えるな!」って言い切った方がいいという判断をしてるようにも取れるけど、原文とはかなりかけ離れた内容になってるのでかえって混乱を招いてるように思います。

Googleグループのディスカッション

この件についてはGoogleグループでディスカッションが立ち上がっていて、そちらも参照すると面白い。

ここで、GoogleのWebmaster Trends Analyst at Google ZurichだというJohnMuが、このエントリの本質を語っています

However, the big problem for us is that the average webmaster often has trouble doing that and if that is the case, we would prefer to have slightly messy dynamic URLs than any kind of mediocre URL rewriting.

ようは「変なrewrite設定でゴミURL量産されるぐらいなら、ぐちゃぐちゃな動的URLの方がましだ」ってことですね。

つーか、「俺のサイトのURL30,000以上あるのに、動的に書き換えてたら半年かかるよ! なんてこったい!」とか言ってる外人がいて噴いた。ちゃんと読もうね。

■まとめ

そもそもURLはGoogleのためにあるのではなく、サイトのリソースを表すものです。SEOなんて一過性で根拠も薄い情報に踊らされずに適切な設計をしましょう、という当たり前の話に行き着くわけです。URIとして意味のあるものはURIとして実装すればいいし、QueryStringとして扱うべき物はそうすればいいだけの話。

ビジネス的にGoogleの順位が大切なのは否定しないけど、だいたいGoogleアルゴリズムなんて複雑極まりない上に日々変わっていく物に対して「こうすれば上位になれる」なんて簡単な解があると考えない方がいい。Google様のご機嫌を伺うよりも、URLも含めた情報設計・リソース設計を適切に行うべきです。

根本的にURIはその後ろでどんな処理が動いているかは関係ない物なので、そろそろ「動的URL」とか「静的URL」とか言うのもやめた方がいいんじゃないかとも思う。イメージしやすいし、分かったような気になりやすいから無くならないだろうけど。

あと、英語だからって敬遠せずにちゃんと読むべきだと改めて痛感した。観測範囲が狭まるだけじゃなく、訳者のフィルタがかかった情報を一次情報と錯覚するのはあまりに危険。「英語が読めない」とか言ってる人は、読めないんじゃなくて自動翻訳や辞書とにらめっこする時間的コストをケチってるだけなんだけど、そこへの投資は惜しむべきではないです。