元旦に自分の方向性とか考えてたら2日になってた

少し前のエントリだけど、今の自分にとって考えたいことなので、今更ながらあえて取り上げてみる。

元エントリで紹介されている、深沢直人デザインによるISSEY MIYAKEの時計「TWELVE」は僕も欲しいと思ったけど、Takaさんと同じように買わなかった。予算的なこともあるし、学生の頃から腕時計というのがどうにも苦手で、自分にとって重要なアイテムではなかったというのもある。締め付けられる感じや、手首の動きが制限されるのが嫌で、特に金属製の腕時計なんかは苦痛にしか感じられない。この間まではaarikka(アーリッカ)というフィンランドの会社(時計屋ではなく、木製の雑貨とかを作ってる)の物をしていて、木のブロックをゴムでつないだバンドで嫌な感じがなかった。それでも仕事中は外していたけど。そのゴムが切れてしまって、今どうしようか非常に困ってます。

そんな具合に腕時計という物自体には思い入れが薄いんだけど、恐らく2年ぐらい前の自分なら買っていた。当時はちょうど自分の中で深沢直人ブームの最高潮だったし、まだデザイナーとしての道も模索していた頃だった。だから「これも自分の肥やしになる」と割り切って、3万円を出すことにも躊躇しなかっただろう。このデザインを見た時は前進の毛穴が広がる思いだったし、そこに込められたデザインの意志に胸の高鳴りを感じずにはいられなかった。そういう自分が残っていたのを感じられたのは嬉しかったけど、でもやっぱり買えない。

特にこの1年は以前はわりと大きかった服飾やインテリアといった分野への時間的・金銭的な投資をほとんどしなくなってしまった。エンジニアとしての自分を育てることに力を注いだことも大きな理由だし、大好きだったmarimekko三菱商事・ルックに独占契約されて、日本に入ってくるラインが極端に狭くなって、クソつまらないブランドに成り下がってしまったというのも大いにあるけれど、やっぱり一番大きい原因は別の所にある。

まぁありがちなんだけど、結婚して家庭を持ってしまったからというのが結局は一番大きな理由なわけで。嫁さん養っていかなきゃならんとか、まだいないけど子供のこととかを考えると、どうしても腕時計に3万円という金額を出す気にはなれないんですよね。収入的には2年前よりもずっと増えてるけど、気持ち的に出せる金額というのは確実に下がってしまった。単純に家賃やら税金やらで生活費が上がった部分もあるけど、金を使うことに対する意識的なハードルはもう間違いなく上がった(子持ちの人から見れば、まだまだ財布の紐は緩いだろうけど)。

こういう流れで「結婚なんてするもんじゃない」とか言う人もいるけど、僕は全くそんなことは思わなくて、むしろリアルな生活感を感じたり、背負う物があることが自分にとってとても大切なことだと感じています。実際の所、自分一人で生きていくなら、大抵のことはそれほど苦労や我慢をしなくても何とかなってしまうわけですよ。生きていくのに必要な金額もぐっと抑えられるし、転職するのも会社辞めてしばらく引きこもるのも、遠くに引っ越すのもそんなに難しいことじゃない。

そうした自由はいい方向に作用すれば、仕事に対する非常に高い集中力や熱意を産むけれど、悪い方に傾いてしまうと独りよがりや無責任につながりかねない。生きていく上で重しを背負っている人は、一つの仕事に対して120%の全力で当たることはないかも知れないけれど、暴走して破綻することもないはず。何かのトラブルが発生した時に、前のめりに死ぬのではなく、物事を成し遂げられなかろうが傷を負おうがとにかく生き残る術を模索するはず。プロジェクトあるいは組織をマネジメントする上では、そういうスタンスで当たる人材というのはとても大切だと思います。

とてつもない勢いで、火のように一極集中することもベンチャーには必要かも知れないけど、どうも自分はそういう生き方を選びたくないらしい。本名からして水属性だしね。いろんなところのバランスを取りながら、最終的に「何とかしてしまう人」というのが今の自分の目標なのかな。いろんな分野に手を出すのも、あらゆる部分で「何とかする力」を身につけたいからなんですね。昔はそうせざるを得ない状況だったんだけど、未だに手を広げ続けてるのはそういうことだと改めて認識した次第です。

「○○のことならコイツに聞け」と言われるようなエッジの利いた人間像にはとても憧れるんだけど、どうも自分はそういう方向を目指している訳ではなさそうです。「とりあえず困ったことはコイツに投げとけ」と言われるような便利屋であり続けることが自分の生き方なのかな。あれこれ手を出して中途半端になってしまうと、本当に虐げられるただの便利屋だけど、一定のレベルを超えればいろんな場面で役に立てる人材として使ってもらえるんじゃないかと思ってます。目指すキャッチフレーズは「究極の器用貧乏」で。