スランプって何?

野村克也氏の「スランプ脱出法」としてすごくいいこと書いてある。

こういったとき、私は逆に「ゆるいボール」を打つことを心がけました。
中学生でも打てそうな、緩いボールを、ゆっくりしたスイングで打ち返す。
それを繰り返す。急いでないように見えて、これがスランプ脱出の最も近道でした。
はやる気持を押さえながら、みっちり繰り返してみる。
逆境に立たされたとき、過去のいいことを思い出しては、いけないのです。
すべてを忘れる。
その結果、ゆるいタマを、ゆっくり打ち返すことを繰り返すことで、
良かったときの調子を取り戻せるのでしょう。
一度、自分の足もとを見直してみるのが、一番のスランプ克服法でした。

思うに「スランプ」ってのは「手クセの貯金が尽きた状態」なんだよね。「強い行動」とか「勝てる一手」を覚えて繰り返すと手クセとして定着する。手クセになると、考えなくてもその「強い行動」が出来るようになる。そうすると他の部分に意識を回す余裕が生まれて、そこにリソースを割り振れるようになるからもっと勝てるようになる。

これが進むと、手クセで処理できる部分がどんどん増えてくる。そのうちに行動全体が手クセだけで構成されるようになり、一本調子になる。ただ、一つ一つの行動は経験に裏打ちされた「強い行動」だから結構勝てる。迷いなく繰り返される「強い行動」は相手からしてみれば処理が面倒なものだ。積み上げた手クセは結果を出してくれる「貯金」になる。

しかし、いずれその貯金も尽きる。相手も対策を練ってくるし、手クセになることで、いつの間にかその行動が本来持っていた「強い部分」が実行できなくなることも多い。

裏の選択があることで強かったはずの一手が、表だけになれば通らない。考えなしに繰り返すことで、自覚できていなかった「強い要素」が劣化することもある。

本人は結果が出なくなって初めて「スランプ」に陥っていることに気付くけど、本当に問題なのはその前の「手クセだけで食ってる状態」だ。そういう時に付け焼き刃の修正をしようとしても効果はない。「勝っていた自分のイメージ」が変な自信になって手クセが抜けないから。


スランプを自覚したら基礎の基礎を一から作り直すしかない。本当に基本的な行動から、一つ一つ意味を考えながら徹底的に問い直す。後戻りではなく、それまでの経験を総動員して深く深く考えることで、一つ上のステージに上がることができる。「基礎が大事」ってのはそういうこと。

スランプに陥らない人ってのは、うまくいってる間も絶えず自問自答して、常にレベルアップを続けていけるんだろう。自分にはそれは難しいから、定期的に「俺ってダメだー」モードになって、その都度凹みながら、階段を上るように力を付けていこうと思ってる。

大切なのはスランプとか限界を感じた時に過剰に落ちないこと。貯金を食いつぶしていたことの反省はしても、それ以外は気にしない。単純に「棚卸しの時期がやってまいりました」ぐらいの認識でいい。もっと早くに気付いてればよかったんだけどねー